気候変動に対する取組み

気候変動に対する取組み - TCFD提言に基づく開示 -

地球温暖化とその影響による気候変動については、これまでも環境問題に係る重要な要素として世界的に広く議論がなされてきており、2015年にパリで開催されたCOP21において、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比較して2℃より十分に低く保ちつつ、1.5℃に抑える努力を追求するという「パリ協定」が採択されました。また、2021年のCOP26においては、「グラスゴー気候合意」にて世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑える努力を追求することが確認されました。
このような気候変動とその取組みは、当社及び当社が運用する私募REIT並びに私募ファンドの事業活動や運用物件にとって重要な課題であると認識しております。

このような考えのもと、当社は、2025年6月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の国内賛同企業による組織である「TCFDコンソーシアム」へ加入しました。TCFDの提言に基づき、気候変動関連リスク及び機会に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」についての分析や対策の情報開示の拡充に取組んでまいります。
こうした取組みを通じてステークホルダーの皆様との対話を促進し、気候変動リスクの低減や機会の活用に努め、「安心と信頼に満ちた社会」の実現を目指します。

ガバナンス

当社では、サステナビリティに関わる業務については、「サステナビリティ推進委員会」が中心となって推進しています。
最高責任者を代表取締役社長とし、企画管理部長を執行責任者とします。最高責任者及び執行責任者は、気候変動への対応をはじめとするサステナビリティ関連の各取組みの進捗状況について定期的なモニタリングを行います。執行責任者は、目標及びKPIを定めた各取り組みの進捗についてその状況をとりまとめ、年に1回以上サステナビリティ会議にて報告します。
マテリアリティと目標及びKPIについては、社会情勢や当社事業、ステークホルダーからの要請などの各種変化を的確に捉えられるよう、定期的に見直し、必要に応じて変更しています。

戦略

当社は、気候変動がもたらすリスク・機会について、当社に業務を委託する投資法人及び私募ファンドの運用資産を対象とした複数のシナリオに基づくシナリオ分析を実施し、気候変動に関する当社の戦略のレジリエンスを確認しています。
当社では、マテリアリティに「気候変動への対応」を掲げ、温室効果ガス排出量の削減や省エネルギー等の取り組みに努めていますが、分析の結果、こうした取り組みが、当社の財務に影響をもたらすリスクの低減や機会の活用に有効であることを再確認することができました。

気候変動リスク分析プロセス

STEP 1リスク・機会の洗い出し

気候変動リスク・機会の洗い出しにあたり、1.5℃シナリオ・4℃シナリオといったシナリオを策定し、業界特性を整理。シナリオを踏まえ、当社にもたらされる気候変動リスク・機会を抽出。

STEP 2リスク・機会の評価

洗い出した気候変動リスク・機会について、1.5℃シナリオ・4℃シナリオにおける各種パラメータをもとに、当社の財務への影響度を定性的・定量的に評価。

STEP 3報告

上記プロセスで評価した気候変動リスク・機会の評価結果について、サステナビリティ委員会へ報告。
なお、気候変動リスク・機会については、定期的に見直しを行う。

シナリオ設定

当社では、シナリオ分析の実施にあたり、以下のシナリオの世界観を設定しています。

1.5℃シナリオ(脱炭素シナリオ) 4.0℃シナリオ(気候変動進行シナリオ)
世界観
  • 環境関連規制が強化され、脱炭素社会が実現した社会
  • 環境関連規制が強化されず、気候変動が進行し、自然災害が頻発する社会
想定される変化
  • 気候変動関連の規制が強化され、企業や不動産の温室効果ガス排出は厳しく規制される。
  • 再生可能エネルギー普及政策が強化され、再生可能エネルギーの活用が進む。
  • 社会全体のサステナビリティへの関心が高まり、脱炭素型のサービスへのニーズが増加する。
  • サステナビリティ情報の開示義務化が進み、ESG投資が拡大する。
  • 気候変動関連の規制の強化はされず、温室効果ガスの排出は現在と同程度となる。
  • 再生可能エネルギーは一部で導入されるが、化石エネルギーが主流となっている。
  • 社会全体のサステナビリティへの関心は低下する。
  • サステナビリティ情報の開示は限定的であり、ESG投資は縮小する。
不動産セクターへの影響
  • ZEB・ZEHに関する規制が強化される。
  • 物件取得の際の投融資判断において、環境性能が重要な要素となる。
  • 炭素税等により、資材の調達費用や建設費用が増加し、不動産価額が上昇する。
  • 環境性能の高い不動産への需要が増加する。
  • ZEB・ZEHに関する規制は強化されない。
  • 物件取得の際の投融資判断において、環境性能は余り考慮されない。
  • 炭素税等による、資材の調達費用や建設費用の増加は限定的となる。
  • 環境性能の高い不動産への需要が限定的となる。
主な参照シナリオ
  • IEA NZE2050シナリオ
  • IPCC RCP8.5シナリオ

シナリオ分析に基づく気候変動リスク・機会の評価結果

洗い出したリスク・機会について、1.5℃及び4℃シナリオにおける各種パラメータをもとに、当社の財務への影響度を評価しました。
本検証は、現時点における収集可能なIEAやIPCC等の公表するシナリオなど客観的な予測データ等を参考にしながら、当社運用資産の状況等を踏まえて定性・定量的に検証したものであり、今後、リスク環境の変化等を踏まえ必要に応じて見直しを行って参ります。
なお、気候変動リスクはリスクが顕在化する時期や規模についての不確実性が高く、必ずしもその情報の正確性及び安全性を保証するものではありません。

影響度 大:5億円超 中:1億円~5億円 小:1億円未満

リスク・機会 内容 影響度 対策
4.0℃ 1.5℃
2035年 2050年 2035年 2050年
移行リスク・機会 政策・規制 炭素税導入による操業コスト増大 炭素税等の規制強化により、エネルギー関連の操業コストが増加 温室効果ガス排出量の削減、省エネルギーの取組
環境規制強化による負担の増大 温室効果ガス排出量等の報告義務が厳格化し、対応の負担が増大 温室効果ガス排出量集計の仕組みの導入
ZEB等の環境規制への対応コストの増加 エネルギー効率向上に向けた改修のコストが増加 環境に配慮した不動産投資の推進
技術 省エネ技術・再エネ普及によるエネルギーコスト減少 省エネ技術・再エネ普及により、エネルギーコストが減少 省エネ技術や再エネの活用
評判 投資家からの評価低下による資金調達コストの増加 ESG評価低下により、資金調達が困難となり、資金調達コストが増加 サステナビリティ情報開示の充実化
投資家からの評価向上による資金調達コストの低下 ESG評価向上により、資金調達が容易となり、資金調達コストが減少 サステナビリティ情報開示の充実化
市場 環境性能が低い物件の競争力低下 環境性能が低い物件への需要が低下し、賃料収入が減少 環境性能が高い物件の取得、既存物件の環境認証取得率の向上
環境性能が高い物件の競争力向上 環境性能が高い物件への需要が増大し、賃料収入が増加 環境性能が高い物件の取得、既存物件の環境認証取得率の向上
物理リスク・機会 急性 自然災害の激甚化による保有資産の損壊と営業機会の喪失 洪水等の自然災害の激甚化により、保有資産の修繕費が増加し、事業中断により賃料収入が減少 自然災害リスクの評価と事前対策
慢性 平均気温上昇による冷房コストの増加 平均気温上昇により、夏場の冷房コストが増加 断熱性能の高い物件の取得

リスク管理

当社では、TCFD提言に基づき、気候変動が当社及び当社が運用する私募REIT並びに私募ファンドに及ぼす影響に伴ったリスクと機会を特定し、シナリオ分析による定性的・定量的評価を実施いたしました。リスク発生の可能性と発生時期、発生した場合の財務影響評価に基づき洗い出した、特に重要な優先順位の高い気候関連リスク・機会に関しては、サステナビリティ推進委員会にて対策案を審議の上、実施します。
本委員会において、気候関連リスクを含むサステナビリティに関連したリスク全般について対策を議論し、その対策の効果をモニタリングしています。

また、当社のリスク管理に関する業務全般を企画管理部が統括し、リスク管理統括責任者である企画管理部長のもと、気候変動リスクを含む事業活動全般に関するリスクについて、統合的に管理しています。毎年、各部門が洗い出したリスクを集約し、分析を行っています。そのうえで、分析結果を踏まえ、リスク対策を議論し、その対策の効果をモニタリングしています。

指標・目標

当社では、気候変動への対応に関する以下の目標(KPI)を設定し、モニタリングを定期的に実施しています。

GHG排出量削減(注1)

  • 2035年度までにGHG排出量63%削減を目指します。(注2)
  • 2050年度までにGHG排出ネットゼロを目指します。

再生可能エネルギー導入

  • 2035年度までに保有物件の再生可能エネルギー導入率50%以上を目指します。
  • 削減の対象範囲は、当社および当社保有物件におけるScope1,2とします。
  • 2023年度対比の削減率としています。